約 85,632 件
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/114.html
第一回戦【サバンナ】SSその2 「い、いやっ……。いやああぁぁぁ。もうだめぇ。もうだめだよぉぉ~~。死ぬぅ!死ぬじゃぅぅ~~~^!」 「そうよっ!イキなさい!イクといいのよぉ!あなたも、ワタシもイクのぉぉぉぉ!」 金の髪と銀の髪が激しく揺れている。 金の髪の女は、銀の髪の少女を激しく責め立てていた。 女の方は既に全裸だ。女は少女へと覆いかぶさり、その唇を、やや小ぶりな胸を、細身な足を、ひたすらに貪っていた。 少女は女によって、服をはだけさせられ、下着を取り払われ、 ひたすらに喘がさせられている。 女性同士が絡み合う濃密な空間……だが、ここは高級ホテルの一室でも、百合の花園でもない。 灼熱の太陽が照らす果てしなく広がる荒野……サバンナの中心である。 爛々と照り続ける日差しと、女達の肉と肉のぶつかり合いによって、異様な熱気が辺りに充満していた。 「あああああぁぁー!!死ぬぅ~~~。死ぬよぉ~~~~!」 「アアアアアァァァ!こんなの、こんなの感じたことないわぁっ!さあ、死になさい、駄目になりなさいぃ~~」 二人の心は完全にここにあらず、とにかく快楽を貪る獣と化していた。 ひたすらに現実から逃避するかのように、恍惚の表情を浮かべ、ただ喘いでいた。 そんな二人を傍から見つめる一人の男がいた。 いや、見つめるという表現は正しくないかもしれない。 確かに二人を見てはいるが、あまり強い興味がある、といった感じではない。漫然と眺めている、というのが正しいか。 そして、男は加えていた煙草を口から離し、ふぅっと息を吐き出すと、空を見上げて、こう呟いた。 「俺の……勝ちだ」 話は一時間ほど前に遡る。 「まさか試合前にサバイバルをやらされるとはな……」 ドォッという音と共に、ライオンが崩れ落ちる。 ライオンの体からは煙が上がり、ドクドクと血が流れていた。 「悪く思うなよ。恨むんなら妙な計らいをする主催者を恨んでくれ」 そうして偽原光彦は手にした銃を肩に担いで、一人ごちる。 銃は全長約90cmの軍用大型アサルトライフルである。 ナイフ使いが得意な偽原であったが、元魔人公安として、当然銃の扱いも習得していた。このライフルは当時のつてで 入手したものであり、2013年頃の最新モデルである。この時代ではやや古い銃であるが、ライオン一匹を仕留めるには 十分な威力であった。 (もっとも、これが群れをなしたライオンであれば、こんな銃では心許ないが……そこまで悪辣ではないか) 偽原が今いる場所、試合場として指定されたサバンナは非常に広大であったが、決して超えてはいけないラインとして、 1km四方はバリアーで覆われていた。 偽原は大会主催者によって試合開始と同時にバリアーの中に転送され、 いきなり一匹のライオンと出くわしたのである。 (それにしてもふざけた大会だ……本当に魔人の力量を見る気があるのか?) 偽原がこの大会の参加を決めた時にまず驚いたのはその大会規定である。 大会で反則とされる行為は、遅刻や試合場からの離脱、観客への暴行行為など、若干のモラル規定に関するものであり、 参加者がいかな方法をもって戦いに臨むかは一切自由。 つまり参加者はどんな武器を使おうと構わない、というのである。 魔人と言っても肉体能力は常人よりやや強化されただけであり、人間が使う通常の兵器は通用する場合が ほとんどである。 このルールで銃火器の携帯を考えない人間は、余程己の能力に自信があるか、 馬鹿の極みであるかのどちらかであろう。 (もっとも、著しい悪徳行為は禁止とあるので、余程酷い武装(核兵器等)は制限されるかもしれないが) 加えて偽原が戦いの場として指定された試合場は野生動物が大量に闊歩するというサバンナ……、 これを見ては偽原も自分が手に入れうる範囲で一番強力な武装で臨むしかなかった。 (もっとも野生動物はこの様子だとエキシビジョン程度の意味はないようだな) 四方がバリアーで覆われているということは、大会主催者の意図としても野生動物との格闘がメインではない、 ということだろう。 彼らがあまり望まない生き物は中には入ってきていないようだ。 (とはいえ、あまり長居はしたくない場所だ。とっとと目標を探すか) いきなりの遭遇戦に息をつく暇もなく彼は足を進めた。そう、彼がこの場で戦うべき相手はライオンではない。 二人の魔人の女性。そしてその片方はライフルをもってしても立ち向かえるか怪しい生き物ときている。 偽原は頭の中で今回の対戦相手のプロフィールを思い返した。 まず一人、エルフの元女騎士ゾルテリア……。一見ふざけた異名だが、エルフというのは通称ではなく、 実際にファンタジー世界の住人であるらしい。もっとも、ふざけているのはその異名だけではなく、その経歴全てであったが。 (全てのダメージを性的攻撃に変換する……か。俺の長い経験の中でもこれ程酷いのはそうそう無いな) 元魔人公安として、数多くの悪行魔人と戦ってきた偽原にとっては、 エルフという異界の住人もそれほど驚くに値するものではなかった。 だが、一切のダメージ無効……のみならずそれが性的な攻撃に変換となると流石に経験の無い相手である。 (もう一人は偽名探偵こまね。17歳女子高生か……、生きていれば、娘がちょうど同じ年齢だが) 偽原はふと、感慨深い表情を浮かべたが、すぐにそれを打ち消した。17歳の小娘と言っても、相手は魔人である。 経歴だけを見たところ、エルフ程の恐ろしさは感じないが、決して油断などできる相手ではない。 しかし彼女も能力の一端は事前に明かされていた。 (どうやら、既に補足しているようだな) 偽原は自分の周囲にふわふわと小さなシャボン玉が浮いていることに気づいた。 こんな荒野にシャボン玉が浮かぶ理由は一つしかない。 詳細は分からないが、シャボン玉を操るという、探偵こまねの能力であろう。 (しかし、中々見つからんな……? 試合場の範囲からして10分ほども歩けば見つかると思ったが) 偽原が歩き始めてから、大分立ったが、未だ偽原の対戦相手は見つかっていなかった。 偽原はすぐに出くわすだろうと思い、試合場の中心に向けて歩いていたのだが、既に通り過ぎ、 反対側のバリアーがそろそろ視界に移ろうとしていた。 その時、 「あふぅっ……!いい、いいわぁっ!ハイエナちゃ~~ん!そこおっ!もっとぉ~!」 突如、嬌声が遠くから耳に届いた。 ちょうどバリアーが貼られた隅の方からである。 偽原は「いたか……」と呟き、心の中でその場所で繰り広げられているであろう光景に嫌な予感がしながら、 その場所へと駆け寄った。 「いい、いいわあっ。その食いつき方~~。上手いわよぉ~~」 予想通り、そこでは金髪のエルフが一匹のハイエナ相手に格闘戦を演じていた。 だが、普通の格闘戦ではない。 ハイエナはなんとエルフの股間に噛みつき、エルフは倒れて悶絶しているのだ。 一見、目を覆いたくなるような残酷な光景に見えたが、エルフの股間からは血の一滴も流れてはいない。 エルフは「あ~ん、あ~ん」と身悶えながら、股間のハイエナと共に荒野の大地でゴロゴロと 身を転がせているだけであり、非常に滑稽な光景となっていた。 (成程な……まごうことなき変態だ) 偽原は瞬時にエルフというキャラクターとその能力を把握した。 つまりあの女に直接的攻撃は一切通じない。 あの噛みつきも、食らいついた場所が腹部や喉笛であれば、エルフはさして痛いとも痒いとも思わなかったであろう。 しかし運悪く(あるいはエルフ自身が誘導したのか)喰らいついた場所が股間であったために、 エルフに快感を与える結果となったのだ。 (このままイッてくれれば楽なんだが) エルフの能力は一度絶頂に達することでその効果を失うという。 偽原はとりあえず警戒しつつも事の推移を見守ることにした。 「あら、ごめんなさいね。ハイエナちゃん。新しい男が来ちゃったわ」 エルフはどうやらこちらに気づいたらしく、突然正気に戻るやいなや、手にしたレイピアで「ふっ!」と 股間に食いついていたハイエナの喉を素早く一突きした。 「キャウッ!」 ハイエナは血を吐き出して倒れる。 エルフは股間からハイエナを剥がし、立ち上がって偽原の方を向いた。 「あらん、ごめんなさいね。折角殿方が来てくれたのに、股間がもうベチョベチョだわ」 エルフの股間はライトアーマーに覆われたままだったが、先ほどのハイエナの牙で穴が開いた状態であり、 そこから涎やら血やらがポタポタと垂れていた。 「……聞きしに勝る変態性だな。エルフ族とは皆そんな感じなのか?」 「失礼ね。望んでこんな能力なわけじゃないわ。優男のおっさん。でも私は男は選ばないわよ~」 偽原は7年間の引きこもり生活によって、頬は痩せこけ、目は充血した不健康極まりない姿となっている。 ある執念によって今の顔に生気は戻っている、とはいえ、優男のおっさんとは、的確な表現であった。 「ほう、そいつは流石の心がけだ。で、次は俺と楽しんでくれるのか?」 「ええ、いいわよお。さあ、いらっしゃいな」 そういって、エルフは手からレイピアを放し、そして両腕を広げて、偽原を迎え入れるそぶりを見せた。 それに対し、偽原もまたライフルを手放し、ゆっくりとエルフへ歩み寄る。 ガキッ! 突如、金属音が響いた。 エルフが接近してきた偽原に対して、矢のような勢いで一瞬で右手に拾い上げたレイピアを向けたのである。 しかし、対する偽原も瞬時に左手からナイフを取り出し、それを受け止めていた。 「あら、素早い反応。流石に警戒してたってわけ」 「俺こそ驚きだ。あんたは誰でも歓迎のタイプだと思ったが」 「悪いけど。無条件で性行為を許すほど、淫乱じゃないのよ。これでも元女騎士だしね」 「私を犯りたければ……、まずは実力で押し通りなさい!」 エルフは更に素早くレイピアを突き出し、対する偽原も再びナイフでそれに応じた。 攻防は、20分程続いた。 エルフのレイピア技術は達人級と言えるほどではなかったが、そこそこ洗練されたものであった。 対する偽原は実に巧みなナイフ捌きで、エルフの攻撃を体にかすらせることもなく全て華麗に受け流していた。 だが……。 「ふっふっふ……テクは凄くても体力が続かないようね。見た目よりは随分持ってるけど」 偽原の額からは大量の汗が流れていた。 エルフの恐るべきところは、種族の違いゆえのものか、その常人離れした体力であり、 偽原に対して、20分の間、休む間もなく攻撃を繰り出し続けていた。 対する偽原も魔人であり、無論身体能力は一般人を凌駕している。公安時代に鍛え上げた技術によって、 エルフのレイピアも最小限の動きでかわしていたが、それでも20分も動き続ければ体力は減る。 そしてこのサバンナの熱気である。灼熱の太陽の輝きもまた、偽原の体力をじわじわと奪っていた、 しかし偽原はもっとそれより大きなものを感じていた。 (やはり失った7年間は大きいか) ただひたすら酒と煙草と麻薬、そしてある映画に憑りつかれた日々……、その7年間と、 そして何より老いによる衰えによって、偽原は自分の体が昔ほど思い通り動かないことを感じていた。 (だが、俺も目的の為に引くわけにはいかない!) 偽原は一瞬、動きに力を戻す。その様子を見たエルフは、しかし余裕の笑いを浮かべながら、 更に激しくレイピアの動きを加速させた。 エルフが体力を温存していたわけでもない。単に楽しんでいるだけである。 そもそもこの剣戟での戦い、偽原の体力以前の要因で勝敗は既に決まっている。 例え、偽原がナイフをエルフに届かせたとしても、エルフには決して通じず、性的な攻撃に変換されてしまうのだ。 つまり偽原が多少気合を振り絞って何とか一撃を与えても、それはエルフにとっては、色んな意味でむしろ喜びにしか ならない。 その事実を偽原が認識してないわけもない。 一瞬取り戻した偽原の快活な動きは、しかし徐々に鈍り、エルフのレイピアが偽原の体にあわや当たるかという 場面を生み出すようになっていった。 この試合は、多くの観客たちによって現在モニターで観戦されていたが、 そのほとんどの目にも決着は近いと思わせる状況へと変わっていた。 「残念ね。あなたのモノを一度は受けたかったけど」 「素直に……受けてくれると……ありがたいがな」 まだまだ余裕で斬撃と共に言葉を投げかけるエルフ。 偽原は既に息を切らせていたが、何とか答えを返す。 「ざぁーーんねん。夫以外の弱い男に興味は無いの!」 遂にエルフの激しい突きを前に、偽原は飛んで後ずさる以外の選択肢がなくなる。 そして思わず、姿勢を崩してしまう。 「もらったっ……!」 一気に偽原へ向かこうとするエルフ。 だが、次の瞬間、 ドーーーン! と大きな音が鳴った そしてエルフの胸が貫かれる。 それはアサルトライフルの弾丸であった。 偽原が飛んだ先の足元にはそれが落ちており、偽原は姿勢を崩したふりをしてそれを拾い、 エルフに向かって撃ち出していたのだ。 通常ならこの一撃が決まった時点でケリがつくが……、この戦いは異なる。 「今更そんなこけおどしに……?」 エルフは平然とした様子である。 今の弾丸による攻撃も、しかしエルフの能力の前には、ちょっと体を揺らした程度の衝撃だけに変化している。 正確には、胸を揉む程度の性的攻撃の快感だが……、ともかくアサルトライフルの弾丸もエルフにはさして効果は無い。 エルフは一瞬驚いたものの、すぐに偽原の方を向き直した。 しかし、エルフはその瞬間、異様な光景を見る。 「なっ……シャボン玉……?」 偽原の周囲に巨大なシャボン玉がいくつも浮かんでいる。 偽原は天に向けてライフルを何発も撃ち続けていた。 そしてそのたびにシャボン玉が銃口から浮き上がり、大小様々な、無数のシャボン玉となって、 偽原の周囲を漂っていた。 (これは……もう一人の娘の能力!) 対戦相手のプロフィールはエルフも当然目を通している。 第三者の突然の介入に警戒を強めるエルフ。 だが、その背後にもう一つの大きなシャボン玉が密かに近づいていることには気付かなかった。 パンッ! エルフの背後で突然、シャボン玉が割れる。 いきなりの事に驚くエルフ。 更にその耳に大きな「声」が響いた 「お、大きいー!大きいよぉー!チン○、おっきぃよぉーーー!」 突如、響いたのは少女の卑猥な大声であった。(やや棒読みであったが) それは男性のある部位の巨大さを示すものであった。 (大きいちん○……?) エルフの女騎士の習性か。その声に思わず心が反応する。 そして正面を向くと……、そこにはなんと偽原がコートの前を広げ、下半身を露わにしていだのである! そして、その偽原の姿は周囲の無数のシャボン玉によって照らし出され、虹色を帯びて、エルフの眼前に 映し出されていた! (お、大きい……、あの男のチン○。それがシャボン玉に映って……) (綺麗……) その光景に、心を奪われ、無数のシャボン玉を、その中に映る偽原のチン○を、注視してしまうエルフ。 それは偽原にとってみれば致命的な隙と言えた。 (余裕で3秒だな……) フ ァ ン ト ム ル ー ジ ュ 偽原は心の中でその思念を飛ばした。 その瞬間、エルフの目に映る無数のシャボン玉に写し出された無数のチン○は1瞬にしてあの映画……、 「ファントムルージュ」の映像へと置き変わった。 そしてエルフの脳内で繰り広げられるは、この世にあるまじき映像、恐るべきファントムルージュの世界である! 「くっ、何よこれ……こんなものに……えっ……?」 「な、なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!しゅ、しゅごいぃぃぃぃぃぃぃぃ……!!私、こんなの知らないィィィィ!!」 「こんな、こんな大きいのはじめててぇぇぇぇぇぇぇぇ!!い、いや、いやああああああああああぁぁぁーーー!!」 突如全身を震わせ、身を悶えさせるエルフ。 顔は紅潮し、目からは涙が、口からは涎がとめどなく溢れる。 両手は股間に伸び、そこを押さえながらビクンッビクンッと全身を振るわせてその場に崩れ落ちた。 (やはりこうなったか……、確信はあったが、な) 偽原の能力、ファンオムルージュ・オンデマンド。 対象が3秒間映像を視聴している時に思念を飛ばすことで。その映像を世界最凶の映画、 ファントムルージュへ差し替え、一瞬の内に相手にファントムルージュの全シーンを体感させる、 というものである。 ファントムルージュの見たものは精神を完全に破壊され、生きる気力の全てを失い、全身の力が抜けていく。 だが、この能力、全てのダメージを性的な攻撃に変換するエルフにも通用するのかどうか? 問題は2点、まず全てのダメージに精神的なダメージも含まれるのか? ということである そしてもう1点は、もし含まれないとしたら、ファントムルージュとは性的な攻撃とはどれ程遠いのか、 ということである。 まず、前者の疑問点については偽原が考えたところで答えは出なかった。答えが出ない問題は考えても仕方がない。 たが、もし、精神的ダメージが含まれようが、含まれまいが、大して問題は無い、と偽原は結論づけた。 それは後者の疑問点に対しては明確に答えが出ていたからである。 「ビ、ビックバンインパクトォォォォ!!は、放ってるぅぅぅーーーー!大きいのをぉぉぉーー!い、いっちゃゥゥゥー!」 「いやぁぁぁぁぁあぁぁ!!出さないでぇぇぇーーーー!!」 そして、大きな絶叫と共にエルフの全身が激しく痙攣する。するとたちまち、エルフの体型が膨れ上がり、 肉の厚い……メタボ体型へと変化してしまった。 (そこで達したか……。俺もその辺りのシーンが限界だった) エルフの能力は今や完全に解除されていた。しかし、にも関わらずエルフは未だに性的攻撃を受けているかの如く。 「だめぇ!」「いくぅ!」「もうやめてぇ!」と喘ぎ声を上げて、ジタバタ転がっていた。 そう、ファントムルージュとは、すなわち人間の精神への凌辱行為である。 例えば、あなたはとてつもなくつまらない駄作を見た時、あまりの辛さに何か自分の大切な者が汚された気分を味わったことは無いだろうか。 更に、そのつまらない駄作が、元は自分のとても好きな小説、漫画、アニメといった、自分にとって大切な原作のあるものを とてつもなく酷く歪められたものだったとしたら? それは自分の魂へのレイプ行為というだけでなく、自分が愛するもの、恋人、親兄弟、姉妹、友人……それらが目の前で、 あらゆる手段で無残に暴行され、汚され、凌辱される……そんなシーンまでをも想起させてしまうものである。 ファントムルージュの惨さはあなたが今想像したつまらない駄作を見た時の虚しさの、数千倍、数万倍であるといってもいい。 そんな映像を味わせられたとき……、ハイエナに股間を咥えられたことでも感じてしまっているような淫乱エルフが、 ファントムルージュに性的な攻撃を想起しないなどど、どうして言えよう? (まあ、ここまでの結果は想像してなかったが) エルフは既にファントムルージュの全場面を体感し終えていた。しかしファントムルージュによって与えられた絶望 (エルフの場合は快楽か)の余韻は一度見終えた程度では消えず、なんとその場で鎧を脱ぎだし、全裸で自慰行為に走りだしたのである。 (これで体型が元に戻ったのでなければ、観客には良いサービスシーンになるんだろうがな) 今やエルフの体型は百数十キロは超えているであろう、太ましい……控えめな言い方をしなければ、いや、 これ以上は読者諸兄の精神的影響を考慮して詳細な描写を控えることとする。 とにかくエルフはもはや心ここにあらずといった感じで、ただただ自分で自分に快楽を与え続け、 ファントムルージュの衝撃からの忘却に耽っていた。 「さて、もう出てきていいぞ。お嬢ちゃん!」 偽原は少し離れた草原地帯に向けて、大きく声をかけた。 やや間が開いた後、一人の銀髪の少女が草原から姿を表す。 「あ、あううぅぅぅ~~。そのエルフさん、大丈夫~~」 「まあ、しばらくは再起不能だろうな。今やただの激太りしたおばさん……という年齢でもないらしいが」 「けどぉ~~、本当にエルフの女騎士を仕留める方法があったんだね~~」 さて、もう説明の必要はないと思うが、この二人は既に試合開始前から通じていた。 反則的な能力を持つエルフの女騎士ゾルテリアのプロフィールを見た時、 偽原は単体で立ち向かうのは骨が折れる相手だと思った。 そんな時、もう一人の対戦相手、偽名探偵こまねのプロフィールを目に通した時、 おそらく自分と同じことを感じているだろうと思った彼は、同盟の打診を考えたのである。 ちなみに連絡手段は普通に彼女の探偵事務所の電話番号とメールアドレスをインターネットで調べて 共同作戦提案の連絡を入れただけである。 本人がトーナメントに出ている今、電話は留守電状態だったが、メールは通じており、「話を聞くよ~~」と可愛らしい 女文字で書かれた返信がすぐに来た。そこから今回の作戦をやり取りしたのである。 「と、とりあえず~、その股間はしまって欲しいかな~、なんて」 「ああ、悪いね。エルフを倒すにはこれ以外の作戦が思いつかなかったんだ」 実のところ、もう少し別の手も考えられなくはなかったが、事前調査したエルフの性格を踏まえて、 これが成功確率の一番高い方法だと結論づけた。 偽原は決して、女子高生に股間を見せることで興奮する様な変態ではない。そっとズボンを上げて、股間をしまった。 「うう~~、でもあの台詞は恥ずかしかったんですけど~~」 チン○という卑語を使ってエルフの注意を引くよう、こまねに促したのも偽原の指示である。 勿論、これもエルフの性格から導き出した、ファントムルージュ・オンデマンドを相手に味あわせるために 必要だった行為である。 「けど、あの人一体何がどうなったんです~~?その、一瞬で……あんな、えっとぉ~~、あ~~ん……」 顔を赤らめ、ぶんぶんと首を振り回すこまねであった。 「ああ、それについては知らない方が幸せだよ、お嬢さん」 「ええ~~、でもちょっと気になりますかな~なんて。名探偵としても」 「そんなに気になるなら……教えてやれなくもないが、しかし折角協力してくれたお嬢さんにそうするのは忍びない、しなあ」 ざっ……と。場の気配が変わる。 偽原はナイフを構え、こまねの方へ向ける。こまねの方も口元を引き締め一瞬後ずさる。 「やっぱり~~、戦わなくちゃいけません~~?」 「お嬢さんが降参してくれるなら、その必要はないが」 「それはできないんだな~~。依頼の完遂は名探偵の仕事ですし~~」 「いい心がけだ。ならばもう言葉はいるまい」 「ですね~~」 その瞬間。 大量のシャボン玉が、こまねの後ろから、偽原に向かって、勢いよく飛んで行った。 (既に戦いの準備はしていたか……!) だが、先ほどまでの戦いから、偽原は既にこまねの能力の大方を把握していた、 おそらく音をシャボン玉に変換し、そのシャボン玉を自在に操る能力だろう。 しかしシャボン玉自体にはさして殺傷能力は無い。 成程、これだけ大量のシャボン玉が一斉に破裂し、大きな音がなればこけ脅し程度にはなるかもしれない。 しかし偽原は魔人公安で特殊訓練を受けた男。大きな音程度で怯んだり、隙を作ったりはしない。 加えてこまねは今のところ武器をもっている様子もない。接近して、一気にナイフで仕留めれば偽原の勝ちである。 (ただし、偽原にはナイフで仕留める、という気はないのだが) 偽原は一気にこまねへ向けて駆け出す。周囲にシャボン玉が向かってくるが、意に介す様子はない。 そして、偽原の周囲にある大量のシャボン玉が……一斉に弾けた! 「お父さん……助けて……!」 「お父さん……苦しいよ……!」 「お父さん……もう嫌だよぉ……!」 割れたシャボン玉から、口々にある少女の声が響いた。 瞬間。 ダァーーン 銃声が響いた。 次の瞬間。 こまねは、偽原によって組み伏せられ、腕を押さえられていた。 こまねのその手には一丁の大口径マグナムが握られている。 「中々の早撃ちじゃないか。それも得意のモノマネで得た技術か」 「そ、そんな……どうして」 「ん、まあお嬢さんが銃ぐらいは隠しているだろうと思ってたからね。警戒はしていたよ」 ちなみに転送された3人は主催者の計らいにより、全員開始地点には野生生物が一匹あてがわれていた。 エルフがハイエナと、自分がライオンと戦っていたことから、 何らかの方法でこまねもまた野生生物と戦い、勝利していたことを偽原は推察していた。 「け、けど……あの「声」は……」 「ああ、よく似ていたよ。聞き違えるはずもない。娘の声だった」 割れたシャボン玉から発せられたのは死んだ偽原の娘、すみれの声に間違いなかった。 こまねはその声によって偽原に隙を作り、隠していたマグナムの一発で仕留めようと画策していたのだ。 だが、偽原は娘の声に何の反応もしなかった。こまねの銃を引き抜く瞬間を見切り、素早く弾道から身をそらした後、 すかさず駆け寄ってこまねに蹴りを見まい、倒れさせた後、その体を抑えたのだ。 「死んだ人間の声まで調べるとは大したもんだ。名探偵の名は伊達ではないな」 「私は、色んな人の「音」を集めることができるから……。娘さんの声も何とか手に入れて。それで、その声を真似て……」 偽名探偵こまねの探偵としての名声はつまるところ、その能力によるものが大きかった。 あらゆる「音」をシャボン玉として収集できることから、 例えば、サスペンス等で犯人達が顔を隠して部屋の中で秘密の会話をしているシーンがあっても こまねは普通にその音を収集し放題である。勝手に聞かれていないと思ってベラベラ解答を喋っていた犯人たちを こまねは何人も捕え、名探偵と呼ばれるようになった (もっとも、そんな馬鹿犯人たちの存在を抜きにしても、この能力は情報収集に非常に優れた能力であったが) そして「音」のコレクションはこまねの趣味の一つにもなっていた。 7年前に死んだ偽原の娘の声は流石にコレクションには無かったが、 幸いにして、当時、偽原の娘が通っていた関西の小学校の運動会の映像を持っている人を突き止め、 親子仲良く運動会に参加している偽原一家の当時の映像と声を入手することができたのだった。 「そいつは素晴らしい。大抵の人間には通じるだろうが……、俺には無理だ」 「どうして……あなたの事は調べました!娘さんと奥さんが死んで悲しかったんじゃないんですか!辛かったんじゃないんですか!」 「……お嬢さんは俺が何故家族を失ったか、それからどうしていたのか、そこまでは調べなかったのか」 「それは……7年前に悲惨なテロ事件があって、それから自暴自棄になったって」 「そのテロ事件の正体は?」 「そこまでは……あの事件に関しては、魔人に対しても徹底して情報封鎖されてたから、詳細までは」 「……それが正解だ。そして最大の間違いだ」 「……え?」 「良いだろう、この映像を見てくれ。俺の妻と娘が生きていたころの写真だ」 言って偽原は右手でこまねを押さえつつ、左手からスマートフォンを取り出した。 そして、その画面をこまねの眼前に突き付ける。 「まあ、見てくれ。娘は、君にそっくりでね」 「え……?」 言ってこまねは画面を注視する。 「別に似てな……」 フ ァ ン ト ム ル ー ジ ュ 「うぐっ……うぐっ……。あうう~。酷いよぉ……、あんまりだよぉ~~。こんな、こんなの信じられない~。人間のやることじゃない~」 「もういやだ、いやだよお~~。見たくないよお~~。助けてよぉ~~。」 偽名探偵こまねは天を見上げながら、わんわんと泣いている。 彼女もまたファントムルージュ・オンデマンドの犠牲となったのだ。 それは魔人とはいえ、17歳の少女が受けるには非常に耐えがたい苦痛と絶望であった。 当然、変態的嗜好の無い彼女はエルフのように快感に喘ぎ狂ったりはしないが、ファントムルージュによって受ける精神的凌辱の度合いは 万人共通である。未だかつて味わったことのないおぞましい感覚に、彼女はただただ泣き叫んでいた。 「それが答えだ、お嬢さん。それを味わった人間にとって家族の声など、もう届きはしない」 「ただただ、世の中を嘆きながら生きていく……。俺がこうして何とか動いているのも、たった一つの執念があるからに過ぎない」 今となっては懐かしい家族の声であったが、もはやそんなもので、ましてや戦いの最中で、 歩みを止めるほど今の偽原の精神はまともな状態ではなった。 彼の精神こそが、既にこの中でもっとも破壊されていたのだ。ファントムルージュによって。 「ファントムルージュ……その痛みを、世界全てが知る……その時までは」 目の前で自分の娘とかつて同じ年頃であった少女が嘆き苦しんでも、今の偽原の心に届くものは何もない。 ただ、戦いを終えた、という気持ちが残るのみである。 だが……、 「あっ、ふっ、うぅーん。あなたも、アレを味わったのね~~」 はっ、と偽原は振り返る。そこには先ほどまで、蹲って喘いでいたはずの女騎士が、這いずりながら、こちらに寄ってきていたのだ。 (まさか……もう立ち直ったのか! あれから!) 警戒を強める偽原。しかしエルフは偽原のことを、眼中にあらずといった感じで素通りし、泣き叫ぶこまねへと向かっていった。 「いいのよ……、全て全て忘れさせてあげるわ~。その方法を知っているの」 「忘れる……忘れる……」 「そう、それはね」 そういってエルフはこまねの唇に自分の唇をつけた。 「イッちゃうのよぉぉぉ!!誰も見たことない世界へぇぇぇーーーー!!」 そうして女二人の絡み合いは始まった。 経験豊富なエルフは欲望のままに、こまねの体を弄び、ファントムルージュによって精神を砕かれていたこまねもまた、 錯乱状態でその快楽を受け入れることに没頭しだした。 互いに「死ぬ」「イク」「駄目」といった単語を連発し、もはや周りなど一切見えておらず、自らの快感に没頭していた。 「さあっ、あなたも……、あなたも来てぇぇ~~。私達を貫いて~~~!!」 「あう~~、分からない~~、もう何も~~~。もう好きにして~~。いやあああぁぁ~~」 しばらく行為を眺めていた偽原だったが、その頃ようやく自分も参加を促されてるらしい、ということに気付いた。 が、その気は全くない。 煙草を一本吸い、気持ちを落ちつけてから、空に向かって……、この試合をモニターで見ているだろう、主催者に向かって 語りかける。 「もういいだろう、おい。俺の勝ちだ。見ればわかるだろう」 天へ向けて、そう再び繰り返す偽原。 そして、ようやく試合場であるサバンナからから、本会場へと転送される。 「お、お疲れ様です」 転送された先では、実況役の少女、佐倉 光素が待っていた。 「俺の勝ち……でいいんだよな? 止めは刺さなかったが」 「はい。まあ、どう見ても二人とも戦闘を続ける気はなさそうですし。けど、どうやったんですあれは? 一体」 「答える必要はないな」 「けど、相手を色情狂にする能力なんて。恐ろしいですね。それにエルフとの相性もすごく良かったです。 あのエルフはあれでも優勝候補の一人かと思われていたのですが」 (ん?ああ、そんな風に俺の能力は思われたのか……) 未だ試合場で性行為を続ける、あの二人の惨状を見れば確かにそんな解釈も無理もない、と偽原は思う。 こまねの方は最初から快楽に溺れたわけでは無かったが、割とすぐにエルフによってあんな事になったため、 外から見ていた人間には、二人がいきなり色情狂に化したようにしか映らなかっただろう。 「けど、そんな能力で……その、ご自分は楽しまなくてよかったんですか?大会的にも、まあ、 そういう行為を止めるつもりはありませんし」 「一部の苛烈な観客からは、「その豚は殺せーー!」とか、「娘の方を犯せ――!」なんて歓声が飛んでましたよ」 「……そんな希望を通して欲しければ、観客の声が聞こえるような場所を試合場にするんだな」 「それはまあ、大会主催者の趣向ですし」 「それに……、俺にそんな悪趣味は無い」 悪趣味というのには二つの意味がある。 一つはファントムルージュによって既に心は魔道に堕ちたと言っても、つい先ほど、やはり ファントムルージュによって心砕かれたばかりの哀れな少女を犯す気にまではなれなかったこと。 もう一つは、そもそも巨大な肥満体型となってしまったエルフが傍らにいては、 その気になど一切なれない事である。 観客たちも同様の気分の者が多いらしく、一部の特殊な性癖の者を除いては微妙な空気でモニターを見ていた。 「うーん、まあいいです。私達にとっては勝敗が重要ですし」 「では、偽原選手の勝利を宣言します」 こうして、偽原光義は1回戦に勝利した。 そしてもう一度、モニターに映る二人の女に目をやる。 どこまで体力が高いのか、エルフの方はまだまだ行為を終える様子が無く、 むしろ激しさを増す様子を見せ、こまねの方はよりいっそう大きな嬌声を上げた。 観客もそろそろ慣れたのか「おお~~」「こまねちゃ~~ん」と黄色い声が上がった。 (ファントムルージュ……それが生み出す業は、やはりとてつもなく重いな) 覚悟を決めたこととはいえ、こうして自ら生み出してしまった惨状に改めて偽原は自らが背負おうとしている罪の重さを再認識する。 (だが、これを乗り越え、俺は勝つ。そして世界に知らしめねばならんのだ。真の滅びを) 決意を新たに、偽原はモニターに背を向け、本会場を後にしたのだった。 このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/230.html
裏準決勝戦【特急列車】SSその2 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『戦闘開始から1秒』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 24.特急列車 戦闘領域:列車から周囲30メートル以内 高速で走る長大な特急列車。食堂車や寝台車も備わっている。 無人で走行しており、運転席で列車の操作をすることは出来ないらしい。 ノンストップで走り続けるこの戦場からは振り落とされないように注意。 「確かにパンフレットにはそう書いてあったなああああああああ!!!!!!!」 『ノンストップで走り続けるこの戦場からは振り落とされないように注意。』 「だからってこの開始位置はおかしいだろおおおおおおおおおお!!!!!」 俺は、いや俺達三人は推定時速150キロで転がっていた。特急列車の屋根の上をだ。 転送と共に超高速でかっとぶ足場に着地したんだ、そりゃコケて列車後方へと転がる。 魔人特有の頑丈さで足首を傷めずには済んだがこれは不味い。 俺は検事故の回転の速い頭脳で残された時間を計算する。 特急列車が7両編成とする。 日本の列車は一両大体20mなのでこの特急列車の長さは20×7=140m 列車は俺の目測で時速150キロ、秒速に直すと150キロ÷3600≒42m 俺達の転送地点は先頭車両の運転室真上の屋根だったから140mをそのまま使い 140÷42≒3.3 つまり3秒ちょっとで俺達は最後尾から転がり落ち、その1秒後には列車から30m 離れて場外負けとなってしまう訳だ。 ここまでの暗算に2秒。近年は探偵の頭脳ばかり注目されてるが、そのライバルである 検事もこれぐらいは出来るんだぜ。ってやべええええええええ!! 「いや、実は大丈夫なんだけどな。俺には事前に準備したアレがあるし。 えっ、アレが何かって?フッフフ、じきに分かるさお前らにもなっ!」 事前に用意していたこの状況を打破できるものなんて存在しないが、 この『やけに引っかかる言葉』から大きめのフックを作り出し 6両目と7両目の連結部分の窪みに引っ掛ける。 何とか留まる事に成功した俺は後ろを振り返る。 どうやら列車が7両編成という計算上の仮定は正しかった様だ。 暗算が0.5秒遅れていたら俺は後ろに転がり落ちてしょっぱなから 脱落していただろう。 そして後方から誰も落ちる様子は見えず、この連結部にも俺しかいないって事はだ、 あの二人もさっきの状況に対応し俺よりも先に停止するのに成功した訳だ。 前方に目を凝らすと列車の真ん中の当たりに肉付きのいい女のシルエットが、 その奥、先頭の方にもう一つ女のシルエットが見えた。 「最初に留まるのに成功したのは聖槍院九鈴、次にゾルテリアで最後は俺か。 この位置は正直言って不利かもな。だが俺は逆境ほど燃えるタチなんでね!!」 俺は『燃える太刀』で連結部の屋根を大急ぎで焼き切りだす。 電車内部ならともかく、電車の外で最後尾なんて不利以外のなにものでもない。 連結部は薄く柔らかく作られているとはいえ、それでも人が抜けられる穴を作るのは 一苦労だ。だが、一刻も早く電車の中に入らないとならない。 いつ前の二人がこっちに飛び込んでくるか分かったもんじゃない。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『戦闘開始から9秒』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 表のトーナメントでは準備の差で敗北し、裏の一回戦では罠に偶然気づけた事で 勝利した。流石にこうなれば私も自分の能力が絶対有利じゃないという事に気づく。 このトーナメントに勝ち抜くには入念な準備と覚悟が必要。 今こうして列車の真ん中辺りの連結部位に留まれたのも、事前に『うぃきぺであ』 というもので戦闘フィールドについて調べ、外に出された場合を想定していたから。 「にしても、半端ないわね。あのトング女」 私がオッパイを連結箇所の窪みに引っ掛けるよりもずっと早く、あの女は靴を脱ぎ捨て 足の指に挟んだミニトングと両手のトングを使って僅かの時間で体勢を立て直した。 そして、最後尾でギリギリ助かってた彼が電車の中に入ろうと何やらギコギコと 武器をノコギリの様に使っているのをチラ見して、私も何とかして電車内に入った方が いいとか思ったけど方法が思いつかないでいた所、トング女こと聖槍院九鈴は 足のトングを上手いこと使って高速で走る列車の上を普通に走って来た。 「ちょ、もしかしてこの場所で闘うの!?」 「許せない。汚い言葉を物質化して散らす彼も、醜悪な外見で見るものの衛生を 損ねるであろう貴方も。これ以上のゴミ増産が行われる前に私が倒す」 「私の事は存在自体否定!?」 ムッカー、温厚な私もこれには流石に激怒ぷんぷん丸。 足場が不安定だろうとその喧嘩買ったるからね! 私は連結部の窪みにどっしりと構え彼女を迎え撃つ。 「さあ、アナタはどんな性技で私にダメージを与えるのかしら?」 「その予定は無い。というか、貴方には醜い本性を出さずに戦闘不能になってもらう」 「出来ると思ってるの?」 「無論」 様子見で繰り出したレイピアを避け聖槍院九鈴のトングが開き私の右肩を挟み込む。 やはり性属性からは遠い攻撃だ。 私はライトアーマーの肩パットを外してのトングからの脱出を試す。 だが、私が肩パットを外そうとするより先に九鈴のトングが肩パットだけを残して 私の右肩から離れた。そしてタフグリップが解除されたのだろう、 肩パットはトングによって私の後方に投げ捨てられる。 でも性技を使わないと言っておいて鎧を外す事に何の意味が? 「それでは、これより私の技が通じるか試させてもらう」 剥き出しの右肩に再びトングが向かう。 「でも、流石に油断しっぱなしじゃないのよ、私もね!」 何をするかは分からないが鎧を奪った箇所にトングが来る事は分かっていた。 私はその機動の下をくぐり抜けてトングを持つ腕に体重を乗せたフックを放つ。 「固っ!」 ごちーんと岩を殴った様な感触、ZTMが無ければ私の拳が砕けていただろう。 そして岩の様に硬かった九鈴の腕は折れても腫れてもいなくて、 動きに支障なく私の右肩を再度つかんでいた。ちくしょうwちくしょうw 「トング術はあらゆるゴミを拾い、離さず、分別し、そして捨てる。 その際に強化されるのはトングだけではない、トングの延長上の腕も」 「ふーん、でこっからどうするの。トングでの物理じゃあ私には効かないけれど、 …はっ、まさかこのまま私を持ち上げて場外に投げ捨てるつもりね!」 「それも考えた、けれどまずは」 九鈴の腕が右肩に固定されたトングをこねくり回すとバリッと音を立てて 私の右肩から何かが引き剥がされた!!右肩に纏っていた黒タイツと一緒に 引き剥がされたソレ、ソレは目には見えないが何かはすぐ分かった。 トングが離れた箇所のタイツが破れ、そこから見える部位に血が滲みズキズキと痛む。 物理攻撃を無効化し性ダメージに変えるはずの私の肉体がだ。 「そんな、私の身体を包む魔力膜をつかみ剥がしたというの!? 掃除人だなんて言ってアンタ本当は何者よ!!」 「聖槍院九鈴。トング道流派、聖槍院流の正統後継者。正真正銘の掃除人」 「アンタみたいな掃除人がいてたまるか!どう見てもレベル15以上の 錬金術師(アルケミスト)じゃない!」 私のいた世界では、メインジョブのレベル15はその分野において王として 崇められ無知なる民衆には神の所業と思わせられるレベルである。 ZTMを父から伝授された時、あの糞ブタ銭ゲバ変態オカマジジイはこう言っていた。 この術はレベル13相当の紋章性術師(スペルマ・スター)のスキルと 女騎士のジョブ特性を組み合わせて開発した、物理はもちろん、 性属性以外の術で破壊出来る術式ではないと。 そのZTMをこんな形で突破するなんて! 「全く、ファントムとかいう亜神級の呪いは飛び交うし、 医者は因果を逆転する奇跡を呼吸をする様に行うし、 光素とかいうのは高位精霊としか思えない存在だし、とんだファンタジー世界だわ!」 「なら今すぐギブアップして帰ればいい。貴方には回収されるべき場所がある」 「やっぱ私の事ゴミ扱いしてるっ!?でも、アンタと距離を取るって一点は賛成ね」 私は一歩下がり連結部から二両目の先端へと移る。 幸い、逃げる手段はもうすぐそこまで来ていた。 「って訳で、一時撤退!」 「逃がさない、貴方は私が」 九鈴がトングを持つ手を伸ばし捕まえようとするが、それよりも早く 私はその場で思いっきりジャンプ!迫ってくるトンネルの縁に頭からダイブ! ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『戦闘開始から20秒』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 肩パットが飛んできた後に続いて本体が飛んできた。 何やら劣勢だったゾルテリアはトンネルに激突する事で特急列車の慣性から離脱し、 九鈴から撤退していた。よって、トンネルと共にケツが150キロで俺に迫る。 多分重さも150キロはありそうなケツは明らかに俺目掛けて降下。 ブレーキと俺への大ダメージを狙った上手い一手だなと感心してる場合じゃねえ! 「諦めんなよ!頑張れ頑張れば絶対出来る!頑張れば司法試験も合格出来るし 裁判で魔人を有罪にだって出来る!ネバーギブアップ!」 『燃える太刀』二本目を既に作った切れ込みに刺し、二刀で穴を押し広げる。 「間に合えっっっ!!!」 結論から言うと間に合わなかった。 連結部の穴は俺の顔面とゾルテリアのケツが連結した時の衝撃でようやく開通し、 俺達は二人揃って連ケツしながら連結部の狭い空間に転落する。 後頭部から床に落ちる、いてえ!続けざまにゾルテリアのケツが乗っかる、くせー! 「わお、ラッキースケベね坊や」 こんなのラッキースケベじゃねえ、それと坊や呼ばわりすんな。 俺はオッサン扱いもガキ扱いもされたくない微妙な年頃なんだよ。 そう反論したかったが口と鼻がケツで圧迫されて声が出せなかった。 おまけに両腕も体重が掛けられ動かせず、両足はある程度自由だが蹴りは届かない様に 絶妙な体勢でのしかかっている。流石は家庭持ちの数百歳。見事な寝技だ。 …あれ?ロジカル使えないし、ひょっとして俺って今詰んでる? 「そのまま話を聞いて、いつあのトング女が来るか分からないから手短に言うわ。 私と協力してあの女と戦ってくれない?賛成なら右足で床を鳴らして。 協力してくれないなら…」 ピッ ブビッ ブピピッ く、くせえーーーーーーーーーーーー!ゾルテリアのケツの割れ目から出る放屁が 俺の鼻にダイレクトアタックしてきたくせえー。 「今すぐ協力してくれないならこのまま10トン爆弾をお見舞いしちゃうわよ」 ブープスプススー そ、それは間違いなく大会最悪の敗因になってしまうじゃねえかくせえー! 同盟するかどうかはともかくせえー、俺は取り敢えずくせえー ブピピピピブモッ くせー一刻も早くこのくせー状態からくせー脱出するくせー為足で床を鳴らすくせー。 くせー直後くせー、くせーケツがどけられくせー俺はくせー自由くせーを取り戻した。 クサクナーイ。 「ぷはぁー。で、色々聞きたいがそもそも何で俺に共闘の話を?」 「その前に最後尾の車両に移りましょう。ここは話し合うには狭いから」 移動しながら俺は考える。 これまでの戦いを見てのイメージではゾルテリアは組むよりも組まれて 対策される側の存在だ。あのバリアーがある限り無策で突っ込んで一人で勝ち上がる。 斬り合いで劣勢だとはいえこんな話を振ってくるキャラじゃない。 罠か?だが俺をハメるメリットが無い。 あのまま尻で圧殺していれば少なくとも俺に対してはラッキースケベ勝利を得ていた。 「これよ」 ゾルテリアは怪我をした右肩を見せる。…おい、何で物理無効バリアー持ってる こいつがこんな怪我してるんだ。ああ、そうか。九鈴がこれをやったのか。 「トングでZTMを分別し、捨てられたわ。あのままやってたら右肩以外もやられて 削り殺されていたと思う。お願い、共闘してくれない?」 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『戦闘開始から34秒』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 私の提案は彼にとって魅力的なものだろう。 さっき偶然が重なったとはいえ完封負け寸前になった彼にとって、 私との戦いの再開は避けたい所のはずだ。 表と裏の一回戦を見た感じ、様々な属性の武器を召喚する『けんじ』(剣士の亜種?) という職業に就いているようだが、私のZTMを破れる可能性は低そうだし 近距離戦闘では偽原や九鈴のレベルからは一段劣る。 私は単独では勝つ方法の見えない九鈴を排除する戦力を得られ、 彼は目の前の危機をスルーし、上手くすれば私と九鈴の共倒れも狙える。 彼は頭も悪く無さそうだし、きっとこの提案を受けてくれるはず。 「共闘ねえ…」 あれ?あんまり好感触じゃない模様。何が気に入らないのだろうか。 「何か問題でも?」 「二人であのやっかいなトングを退場させるのはいい。 それじゃあどうやってアレを倒すのか考えはあるのか?」 「ああ、そういう事ね。心配しないで、策はあるわ」 「ほう、聞かせてもらおう」 「アイツのトング攻撃は身体の前面からしか繰り出せないし、トングと トング術使用時の両腕以外の強度は並。よって片方がおとりになって もう一人が背中から斬りかかる!以上!」 「じゃあどうやって背後を取ればいい?」 「え、えーと座席の間かトイレに隠れて、もう一人と戦闘中に後ろからグサッって」 私はややしどろもどろになりながら答える。エルフの女騎士は基本ソロプレイの 戦闘員だから連携の策はこのぐらいしか思いつけない。 私は悪くない、ジョブ特性値の問題なのだ。父や夫ならいい考え浮かぶんだろうけど、 あいつらは女騎士がメインジョブじゃないから。ば、馬鹿じゃないんだからね。 ソロでの冒険知識や嘘を見抜く能力は高いんだからねっ! だが、ケンジさんは私の共闘案に納得いかなかった模様。 「そんなフワフワした考えじゃあ協力できねえな。 俺は魔人とアホが何よりも嫌いなんだよ」 反対の意見と共にズボンとパンツを一気に降ろし、ボロンとイチモツをさらけ出す。 私にとっては最大のダメージ倍率となる生男根。 それを出すって事は交渉は決裂したのか。 「やれやれ、あのトング女は私一人で」 「さっさと済ますぞ、掃除屋がここに乗り込む前にケリを付ける」 私の言葉が終わらぬ内に彼は言葉を被せてきた。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『戦闘開始から2分7秒』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 「思ったよりやるわね!」「てめえもな!」「この技はどうかしら?」 「うぐ!だがまだまだ!」「いやん!そこはだめぇ!」「ここがええのんか?」 「これで決めてやるわ!」「さあ来いっ!」 「「うおおおおおおおおおおおっっっ」」 『実況の佐倉光素です。裏トーナメント準決勝特急列車、激しいバトルの末に 内亜柄影法選手死亡!後はゾルテリア選手と聖槍院九鈴選手の一騎打ちです』 「ふうっ、間にあったか」 アナウンスの後、私は息を整えて聖槍院九鈴を待ちうける。 と、正にその時6両目と7両目の連結部の自動扉が開き、やっかいな敵が現れた。 さっきまで近くに気配は無かった。きっと私の開けた穴の近くで待機し、 決着のアナウンスを聞くや否や体力の回復する間を与えない為に下に降りてきた、 そういった所だろう。 「…その格好はどういうつもり」 私の見た目に突っ込む九鈴。無理も無い、最初に列車の上で戦った時と違って 私の顔は黒いタイツに覆われていた。てっぺんから見える金色の髪と 生乾きの血がこびりついた右肩以外すっぽりタイツに隠された姿を見ては 疑問を口にするのも仕方ない事だろう。だから私はこう答えてやった。 「今の私は貴方に負けたゾルテリアではないっ!私は黒タイツウーマン! そう、いわば第二形態みたいなものなのよ!私は天才、私は万才、 30…私は約20才」 「…バカじゃないの」 無表情でツッコミを入れる九鈴、うん、私だって馬鹿だとは思う。 だが、これも勝つためのステップの一つ。私はその場でくるくると回り歌い出す。 「前人未到の空前絶グォ~ 天下無双の針小棒ドァイ~ 驚天動地の五里霧ッチュ~ 我田引水自画自スワ~ン 青は藍より青く花より団子 とにかく無敵の 大・大・大・大・大・大・大・大・天・才~」 何度もその場で回転し、キリッとポーズを決める。 九鈴はさっさと終わらせて帰りたいという顔をしていた。 「死ぬ前の最後の言葉はそれでいいの?」 「この黒タイツウーマン、負けるつもりは微塵も無し! 準備運動は完了よ、さあいくわよっ」 私は奇乳とも言えるサイズの胸の谷間からレイピアを抜き放ち真っ直ぐに突く。 狙いは心臓!だが、レイピアの先端は簡単に、それこそゴミを拾うがごとく 黒いトングで摘ままれてしまう。 「あらま」 「それでは半端に終わったゴミ掃除を再開する。今度は逃がさない」 右手のトングでレイピアの先端を押さえたまま、左手のトングが私の着ている ライトアーマーと黒タイツを次々と剥がしていく。露わになる裸体、 手ごたえの無いZTM、落ちる胸の詰め物、飛び出すチンチン! 「いやーんみないでぇー、オカマッ」 「えっ、どういう…」 明らかに狼狽の色を浮かべる九鈴。 私は、いや、俺は好機と見て一気に策の仕上げに向かう。 「伸びろっ、レイピアー!」 『やたら間延びした歌』から生まれた伸縮機能を持つレイピアが俺の命令に反応して トングに摘ままれたまま伸び、先端が九鈴の胸をえぐる。 「うぐっ、な、内亜柄影法!死んだはずじゃあ」 「あの放送か?車内マイクを利用させてもらったのさ。それじゃあさよならだ」 九鈴の胸から本物のシルバーレイピアが生える。 俺の服を着たゾルテリアが背中から九鈴の心臓を貫いたのだ。 放送を信じていた九鈴は俺に化けたゾルテリアを死体と思いんだ結果、 背後からの攻撃を無防備で受け絶命した。 『実況の佐倉光素です。裏トーナメント準決勝特急列車、激しいバトルの末に 聖槍院九鈴選手死亡!後はゾルテリア選手と内亜柄影法選手の一騎打ちです』 本物のアナウンスが俺達と観戦者に九鈴の脱落を伝えた。 「終わったわね。にしても、良く思い付いたわね。こんな手段」 ゾルテリアの共闘案の後、ほぼ無策と言っていいゾルテリアの案に呆れ返った俺は 『被せる言葉』より生成したズラを出し、それを被りながら頭の良くない彼女にも 分かるように作戦を説明しながら必勝の策を作り上げていった。 この列車は運転は完全自動という説明がなされていた。 ならば運転以外の機能は俺達が利用しても問題無いという事だ。 最後尾の車掌室のマイクが利用できる事を確認すると、 俺達は激闘の叫びを上げながらお互いの服を交換していった。 はたから見たら間抜けそのものだが、九鈴に近づかれる可能性を少なくしつつ 入れ替わりを完了するには他に手段が無かった。 ちなみに黒タイツウーマンについてはゾルテリアのアイデアである。 「ところで、光素ちゃんや私の声マネ凄い似ていたわね。どうやったの?」 「おいおい俺は天才検事、それも声のスペシャリストだぜ? 探偵に出来る事なら俺にだってできるさ」 「…『けんじ』って剣士の上級職じゃなかったんだ」 もっとも、この偽アナウンス戦術を閃いたのはついこの間。 偽探偵こまねの遊園地での戦い方を見てからだけどな。 「それじゃあ、これで共闘は終わり。私達の戦いの続きをしましょう。 あ、その前に貴方の服返すわね」 「ああ」 ゾルテリアから渡された服を受け取り袖に手を通す。 胸周りが多少伸びている気がするが、トングを刺されて穴だらけのタイツより ずっとマシというものだ。などと考えていると、 「はい、ドーン!」 「うおっ!」 服を最後まで着る前に全裸のゾルテリアヒップアタックが俺にヒット。 そのまま揉み合って床に転倒し、俺の両腕はガッチリとロックされ、 顔面にはケツが押しつけられ言葉も発せられず僅かな隙間から 呼吸ができるのみの状態になってしまった。 「さあ、約束通りさっきの続きからよ!」 いや、確かに共闘前の体勢はこうだったけどさ。 「そして、私としてはギブアップをお勧めするわ。 言葉を戦闘の起点にしているアナタにはこの体勢からの逆転の手は無いはず。 さらに言えば全裸なせいで私は今お腹すっごいゴロゴロしてる!」 プスッ プー 尻からの放屁が始まった。くせー。耐えろ、そして考えろ俺。 天才検事の頭脳を持ってすればこっからの逆転の策はいくつも思い付けるはず。 ピプピー、ブブッブー 両手をどうにかして動かせばくせー、くそ、くせー、体重と技術の揃った見事な くせーロックと言わざるを得ない。ならば割と自由な足で相手を蹴りあげる!くせー 俺は足を畳みくせーゾルテリアのボディに膝を撃ち込み、し、しまった! 「はうう!そんな所蹴られると…らめぇぇぇ!!」 ブリブリブリー!ブリュブリュブリュブリュー! くせーくせーくせー土石流のごとくくせー下痢便が俺の顔にぶっかけられくせー くせーこうなったらくせーギブアップするしかくせーないのかくせーくせーくせー くせーあれ?この状態でくせーギブアップどうすればいいんだくせーくせー 右足でくせー床をくせー鳴らすくせーいやくせーこれはくせー共闘へのくせー同意 ブリブリブリブー!ゴボッ!ブチャラッティー! た くせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせー く す せーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせー くせー け くせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせー くせー て くせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせーくせー ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『戦闘開始から1時間37分42秒』 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 『たった今、内亜柄影法選手の失神が確認されました! よってエルフの元女騎士ゾルテリア選手の勝利とさせていただきます!』 ケツ・着! このページのトップに戻る|トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/39.html
仲村佳樹作品SS&妄想スレ 仲村佳樹作品妄想スレッドです。 SS職人随時募集中 全年齢向けでヨロ。エロはエロパロ(18禁)へ 妄想や未来予想などの話題でもOK 【暫定ルール】 ◇荒らし、煽りは放置 ◇転んでも泣かない ◇sage推奨? ◇970レスor480KB越え辺りでスレ立て ◆◆このスレの内容を本スレへコピペする行為は厳禁です◆◆ 現行スレ 移転落ちにより現在休止中 前スレ 仲村佳樹作品SS&妄想スレ9 http //namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220218201/ 倉庫 http //maron-ss.hp.infoseek.co.jp/ ページ最上部へ
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/203.html
大五郎が通る!・SS 連続SS 第一話『そいつの名、忘れがたし』 第二話 『男、思い出す』 DBへ SS保管庫へ
https://w.atwiki.jp/tokimeki_dictionary/pages/661.html
Best friend 親友【しんゆう】 登場キャラクターにとって最も親しい友人の事。 大抵は幼なじみであったり、小・中学校からの友人であったり、高校に入って友人になったりする。 なお、主人公の友人として登場する同性のキャラは友達キャラを、親友モード(DS版GSシリーズのシステム)・幼なじみに関してはそちらを参照のこと。 『1』では、藤崎詩織と美樹原愛、朝日奈夕子と早乙女好雄が、 『2』では、陽ノ下光と水無月琴子、寿美幸と白雪美帆、一文字茜と赤井ほむら、八重花桜梨と佐倉楓子、麻生華澄と九段下舞佳、坂城匠と穂刈純一郎が、 『3』では、牧原優紀子と相沢ちとせ、河合理佳と御田万里、橘恵美と神条芹華、白鳥正輝と矢部卓男が、 『4』では、星川真希と語堂つぐみ、龍光寺カイと皐月優、郡山知姫と水月春奈、柳冨美子とエリサ・D・鳴瀬、前田一稀と大倉都子、小林学と七河正志が、 『GS1』では、葉月珪と守村桜弥、姫条まどかと鈴鹿和馬、氷室零一と益田義人、天之橋一鶴と花椿吾郎、尽と紺野玉緒(名前だけ登場)が、 『GS2』では、佐伯瑛と針谷幸之進、志波勝己と真咲元春(この2人は幼なじみでもある)が、 『GS3』では、紺野玉緒と設楽聖司、不二山嵐と新名旬平、宇賀神みよと花椿カレンが、 『GS4』では、風真玲太と颯砂希(この2人は幼なじみでもある) 本編ではその関係にあたる(派生作品などを含めると、結構な組み合わせになったりするのだが…)。 中には、何時何処でどうやって知り合ったのか皆目分からない組み合わせもあるのだが、当人同士が仲が良いのだから、その辺りは気にしない方が良いだろう。 それぞれの呼び方も名前で呼び合ったり、片方が名前でもう片方が愛称で呼び合ったりと様々である。 『2』では、主人公の動向次第で親友同士の友情が深まる事もある。一方が主人公への好感度が高く他方のそれが普通以下の場合は、主人公との進展を応援すべく仲を取り持ってくれる感じになる。 逆に、親友同士の友情を引き裂く場合もある。水無月の攻略時に光と水無月が不仲になるのは半ばお約束であり、両者共に好感度(特にときめき度)が非常に上がりやすい寿と美帆など、2人共登場している時は容易に険悪な仲にさせる事が出来る。 現実の世界でも、女の友情を引き裂く最大の原因は男と相場は決まっている(恋愛事情においては逆もある)が(GSシリーズでもライバル宣言で簡単に険悪になる)、そんな所まで再現してしまうとは何とも恐ろしいゲームである。 関連項目 用語 友達キャラ
https://w.atwiki.jp/damecool/pages/8.html
投稿されたSSのまとめです。 【テスト】 女「どうだ?テストの結果は?」 男「いいわけねーだろ……」 女「ははは。男はバカだからな」 男「お前に言われるともこもこにしたくなってくる」 女「その点私は勉強はできる。今回も全て楽勝だったさ」 男「ほうほう」 女「あ、私の分だ」 男「どうだった?」 女「……名前書き忘れた……」 男「…」 【ようつべ】 女「……おはよう……」 男「ん。なんか眠そうだな?」 女「ああ、わかるか?」 男「なにしてたんだ?」 女「いやな……昨日の夜、ようつべでずっとプロモをみてたんだ」 男「…」 女「チルドレン・オブ・ボドムやメガデス。スラッシュやハロウィン。 アンスラックスなんかを延々な。いや、ゴリゴリしてていいぞ?」 男「…」 女「まあ、私が外見に似合わずそういうのを聞いているのにビックリするのもわかるさ」 男「いや、あのな」 女「ん?」 男「ようつべってなんだ?」 女「…」 男「あとお前な、あんま人前でそういうの言うな。ちょっとひいたよ」 女「……」 【ガガガガ】 男「おい」 女「なんだ?」 男「ガガガガって知ってるか?」 女「ん?知らんな」 男「漫画でな。これがおもしれーんだ」 女「そうか」 男「タイトルがすげーよな。ガガガガだぜ?」 女「うむ」 男「ガガガガ。すごいな」 女「…」 男「ガガガガ。よく思いつくよな、ガガガガ、ガガガ――」 女「ガオガイガー」 男「え?」 女「…」 男「……意外と知ってるなお前……」 女「/////」 なんだこれ 【VIP】 女「男はネットとかするか?」 男「しねぇ」 女「…」 【萌】 女「男」 男「ん?うわっ!なんだその格好!?」 女「メイドさんだ」 男「そりゃわかるけど……」 女「可愛いか?」 男「…」 女「な?な?」 男「……か、可愛いよ……////」 女「///うん、そう言ってくれればいいんだ////」 男「何がしたいんだよお前////」 女「あれか?萌えか?」 男「…」 女「ん?ん?」 男「……萌え?」 女「…」 男「どうでもいいけど、お前今日はそのずっと格好か」 女「うん。可愛いだろ?」 男「それはいいけど……ここ学校だぞ?」 女「……あ……/////」 男「ほんと病院行け?な?」 【走】 女「走りたい」 男「ああ、どこまでも行け」 女「そうじゃない。競争だ」 女「いいか」 男「待て待て……なんで俺とお前が競争なんだ?」 女「男はいつでも挑戦を受ける。それが男道ってやつではないか?」 男「うん、ごめん。もう何もいわない」 女「負けたほうがパンな」 女「いちについて」 男「よーい」 男・女「「ドン!」」 ズシャァ!!! 男「……うん、予想はしてた」 女「ひっく……ひっく……」 男「泣くな?ほら、おんぶしてやるから。な?」 女「うぅ……」(作戦通り) 男「なんだそのにやけ顔?」 女「…」 【クール】 女「私はクールだ」 男「あなたが神か」 女「いつも冷静沈着。どんな問題も華麗に解決」 男「…」 女「この長くて綺麗な髪。まっすぐと先を見つめる眼差し」 男「…」 女「ふふふ。惚れ直したか?」 男「まあ、小銭拾いながら言うせりふじゃねーな」 女「…」 男「しかも今日三回目な」 女「……拾ってください……」 女「……誰かと思えば男じゃないか」 男「女? どこだ?」 女「下だ」 男「下? ……うわぁ」 女「ん? どうした?」 男「そりゃこっちのセリフだよ……なんで落とし穴なんかに……」 女「落とし穴じゃないぞ。この辺りに埋蔵金が埋まってると聞いてな、試しに掘ってみたんだが」 女「気付いたら穴から出られなくなってしまっていた……」 男「……出してやろうか?」 女「おお、頼む」 男「よいしょっ……おうっ!?」 ドサッ 男「……落ちちまった」 女「君は実に馬鹿だな」 男「お前にそう言われる日が来るとはな……」 女「次善の策を取るまでだ。そうだ、二人で地球の裏側まで掘り進めばここから脱出出来るんじゃないか?」 男(駄目だこいつ早くなんとかしないと……) こうですか分かりません>< 男「お前また授業サボリか・・・」 女「何を言っている。我が校では授業の3分の2以上出席すればいいことになっている。 つまり、3分の1は休んでもいい、ということだ」 男「・・・・」 女「後は定期試験で赤点を取らない程度に勉強、まあ最重要事項だけ押さえておけばいいということだ」 男「よ、今日は来たのか」 女「予定外だ・・・。もう3分の1分サボってしまった」 男「・・・・」 女「やはりちゃんと日数を計算しておくべきだった・・・」 男「してなかったのかよ・・・」 男「ふあぁー。明日からいよいよテストだなー」 女「そうだな。・・・折り入って頼みがある」 男「ん?」 女「ノートをコピーさせてくれ」 前 次
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/459.html
破攻神 ヴァンガイザー・SS 単発 第一話「戦いの幕開け」 DBへ SS保管庫へ
https://w.atwiki.jp/bokurobo/pages/382.html
峯噴絶闘バクザンオー・SS 連続SS 第一話「その名はバクザンオー」 第二話 「激闘、激怒、激動そして宇宙へ」 第三話「初めての敗北」 第四話「謎の生き物モニュ登場?」 第五話「すれ違う心、重なる思い」 第六話「完成!ボルカイザー」 第七話「掃除の日」 第八話「最悪だけど最高な誕生日」 DBへ SS保管庫へ戻る
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/159.html
親父書きがSSを読む その1:お姫様抱っこで保健室に
https://w.atwiki.jp/dangerousss3/pages/99.html
第一回戦【硫酸風呂】SSその2 一回戦開始数分前。選手控え室。 蒼白のコートを着込み戦いへの準備を終えた儒楽第は、かつての仲間……否、家族のことを思い出していた。 彼が眺めているのは、所持を許された数少ない私物。ボロボロになった一枚の写真だ。 そこに写っているのは儒楽第と、十数名の男女達。 皆、彼にとってかけがえの無い、大切な人だった。 しかし彼らは既に、この世にはいない。一人残らず……ある男に、殺された。 確かに、彼らは悪だった。多くの者を搾取し、死に追いやった。直接手を下したことも、少なくは無かった。 だとしても、彼らは儒楽第の、かけがえの無い家族だった。 血よりも遥かに濃い繋がりをもった、家族だったのだ。 試合場へのゲートが開く。 儒楽第は写真をしまい、ゆっくりとした動作でゲートをくぐった。 ここから始まるのだ、奴への復讐の、第一歩が。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 同時刻、猪狩誠の控え室。 そこにはこれから試合に出場する猪狩誠と……もう一人。10歳前後の小さな少年がいた。 「ありがとなまさる。こんな遠くまで応援に来てくれてよ。」 彼の名はまさる。孤児院の皆からの代表で、ここまで応援に駆けつけてくれたのだ。 「ヘヘヘ……。他のみんなも来たがってたけど、園長が 『まさる、お前が行くのが、一番猪狩のためになるはずだ』って!」 まさるの邪気の無い声を聞いて、猪狩は思わず口元を歪めてしまう。 「そうか、園長が……。へへっ。中々味なことしてくれるじゃねえか。」 「がんばってね、誠兄ちゃん!怪我とかしないでね!」 まさるは猪狩を励まそうと、元気な声で言う。 しかし、それと対照的に、猪狩の顔は、僅かに暗くなっていた。 「誠兄ちゃん……?」 「……ああ、任せとけ!……って、言いたい所なんだけどな。 これから戦う相手は、すごく強いんだ。魔人の中でも特別といって良い。 怪我をしないどころか、もしかしたら……」 「誠兄ちゃんだって、すっごい強いよ!僕も、孤児院のみんなも知ってるよ!」 猪狩の弱気な声を掻き消すように、まさるが一層大きな声を出して、猪狩を励まそうとする。 「兄ちゃんだったら、相手がどんな奴だって勝てるよ!俺、信じてるから!」 「まさる……」 猪狩の大きな手が、まさるの頭をなでる。 「ごめんな、まさる。不安にさせちまったな。」 「……兄ちゃん…」 「でも、大丈夫。ちゃんと、勝つ方法も考えてあるから。」 「本当!?」 その言葉を聴いて、まさるの顔がパァッと明るくなる。 「ああ、ホントさ。でも……それにはまさるの協力もいるんだ。やってくれるか?」 「勿論!誠兄ちゃんの為だったら俺、何だってやるよ!」 殆ど間を置かず、まさるは答える。その声もその顔も、真剣そのものといった感じだ。 「ありがとう、まさる。お前ならそう言ってくれると思ってたぜ!」 猪狩は実にうれしそうに笑いながら言った。その笑顔はひどく純粋で、それ故にひどく……恐ろしかった。 「ねえ、兄ちゃん。それで俺はなにを……」 なにをすればいいの?まさるはそう問いかけようとした。だが、 「が……っ!?」 まさるがそう問いかけるより先に。 「まさる、ありがとな。本当に。」 猪狩の拳が、まさるの鳩尾に突き刺さっていた。 まさるの口が空気を求めて、パクパクと動く。あまりの出来事に、彼には何が起こったかわからなかった。 そんなまさるの様子など気にも留めず、猪狩はまさるの顔面を殴りつける。 「ぶぁ……」 口内が切れ、血が飛び散る。歯が数本宙に舞う。まさるは自分でバランスを取る事ができなくなり、そのまま後に倒れこむ。 「すげえ。どんどん力が流れ込んでくらぁ。まさる、お前、本当に俺の事を思ってくれてたんだな!」 満面の笑みを浮かべながら、猪狩は馬乗りになり、まさるに拳を打ち込み続ける。 まさるは殆ど意識を失っており、抗う事はできなかった。 「安心してくれ、まさる。殺しまではしない。試合が終わったてすぐに手当てすれば、間に合うはずだからさ。」 まさるのかわいらしかった顔が見る影も無いほど無残になっていく。 …猪狩が殴るのをやめたころには、既に試合場へのゲートは開いていた。 「よし、それじゃ、行ってくる。まさる…お前の為にも、必ず勝ってくるからな。」 ボロボロになった家族を残し、猪狩は試合場へと転送されていった。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * ぐにゃりと空間が捻じ曲がり、何も無かった柱の上に、一人の少年が姿を現す。 「なるほど……。説明は聞いてたけど、改めて見るとすげえな。」 猪狩の周りには大小さまざまな柱が立ててあり、 その下には、蒸気と音を立て、柱を溶かさんとする硫酸が、まるで湖のように広がっていた。 「ぐずぐずしちゃあ、いられないな。」 猪狩は対戦相手を探すために移動を開始する。 そもそも、この試合場では隠れる場所などほとんど存在しない。程なくして、儒楽第は見つかった。 「遅かったな……。ずいぶんと、待たせてくれたじゃねえか。不戦勝かと思っちまったぜ。」 試合場の中央付近にある、一際大きい柱。そこに、儒楽第は居た。 身長は一回りほど猪狩よりも小さいが、 その体つきから、肉体は彼より遥かに鍛え上げられている事が見て取れる。 「……勝たなきゃいけない理由があるんだ。俺は逃げたりなんかしない。」 猪狩は戦闘体勢を取りながら、儒楽第と同じ柱へと飛び移った。 同時に、儒楽第もゆっくりと構えを取る。 両者の間合いはおよそ10mほど。 猪狩はじりじりと、ゆっくりと間合いを詰める。儒楽第は、構えを取ったまま動かない。 ……この時既に、儒楽第は猪狩誠の実力をほぼ完全に把握していた。 達人が道着の来方を見て実力を察する、それと同じように。 この男は自分には遠く及ばない。そこそこに実力はあるようだが、それは一般の魔人と比べた時の話。 自分のような特化した魔人とは比べ物にならない。 初撃を躱し、急所に一撃を入れる。それでこの試合は終わる。 それが儒楽第の出した結論だった。 両者の距離が5mほどに縮まった所で、猪狩は間合いを詰めるのを止めた。 (来るか) 儒楽第は猪狩の動きを見切るため、精神を集中させる。 「行くぜ、まさる。俺に……力を貸してくれ。」 猪狩が一瞬だけ目を瞑り、呟く。 ……瞬間、猪狩の立っていた地面が爆発するように抉れ、儒楽第の目の前に猪狩誠が踏み込んでいた。 「――――――!!」 儒楽第は決して、油断していたわけではなかった。 勿論猪狩が強化系の能力者である事は考慮に入れていたし、 今までの経験から、それを踏まえたとしてもやはり、実力には差があるだろうと考えていたのだ。 通常の強化系能力では、ここまで劇的に身体能力が伸びる事はまずありえ無い。 絆の大きさが、そのまま力になる。これが猪狩の能力『All for one』の力だった。 「オォォォォォ!!」 猪狩の渾身の一撃が、儒楽第を襲う。 「チィッ!」 だが、そう簡単にやられる儒楽第では無い。すぐさま防御姿勢をとり、致命傷を避ける。 「……驚いたぜ。ここまで強力な強化能力者とは、初めて会った。」 ふき飛ばされ、口から血を吐きながら儒楽第は言った。 「まさか俺が、こんなガキに一発入れられるたぁ……思ってなかったぜ。」 「言っただろ。勝たなきゃいけない理由があるって。」 儒楽第がくつくつと、肩を揺らして笑う。 「そうか……。だが、負けられねえ理由があるのは、こっちも同じなんでな。」 彼の周囲の空気が、少しずつ、赤く色づいていく。 「そして残念だが。さっきの一撃で決められ無かった時点で……お前の負けだ。」 「ハァーッ!」 猪狩は勝負を決するため、儒楽第に向かってもう一撃叩き込もうとする。 儒楽第はもう、避けも守りもしなかった。 「な……!」 猪狩の放った一撃は、確かに儒楽第を捕らえたはずだった。しかし、 「なんだよ、これ……!」 「……言っただろ?負けられない理由があるってよぉ。」 その拳は、儒楽第にヒットする寸前、彼を覆う赤いオーラによって食い止められていた。 「オ……」 「オオオオオオオオオオオ!」 猪狩は先程より強く踏み込み、更にもう一撃放つ。 それでも駄目なら、もう一撃。一撃、一撃、もう一撃。 …しかし、何発叩き込んでも、その拳が儒楽第に届く事は無かった。 「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」 「諦めの悪い奴だ。何度やっても、無駄だってのによ。」 「……当たり前だ。俺の勝利を願ってる家族の為にも、俺は勝たなくちゃいけないんだ!」 家族。その言葉を聞いて、儒楽第がピクリと反応する。 「ハ……。家族のため、か。」 「何がおかしい!」 猪狩が儒楽第を睨み付ける。そこには、明らかな怒気が含まれていた。 「おかしくはねえさ。なにせ俺も、家族のために闘ってるんだからな。……もっとも、そいつらはもう死んでるが。」 「どういう、ことだ……?」 「復讐だよ。俺の家族は……森田一郎。あの男に殺された。」 猪狩は押し黙って、静かに儒楽第の話を聞いていた。 「このトーナメントを勝ち抜いて、俺はその機会を手に入れる。家族の無念を晴らすためにも」 「奴を、同じ目にあわせてやる。奴の大切なものを目の前で食い散らかして…その後でじっくりと、いたぶりながら。…奴の息の根を止めてやる。」 しばしの間、二人を静寂が包む。 その静寂を破ったのは、猪狩だった。 「……ってる」 「あん?」 「そんなの、間違ってる!」 理性ではなく、感情の赴くままに、言葉をぶつける。 「死んだ家族のため……?ふざけんな!死んだ家族が、そんなこと望んでると思うのかよ!」 「……てめえが、俺の家族を語るんじゃねえ。」 儒楽第が明らかに殺気がこもった声で言った。しかし、猪狩の言葉は止まらない。 「死んだ家族は、復讐なんて望んでいない。残された人に幸せになってほしいと、そう願ってるはずだ!」 真っ直ぐな目で、儒楽第を見つめる猪狩。 それに対して、侮蔑を込めた声で、はき捨てるような声で儒楽第は言う。 「……ハ。所詮てめえも、綺麗ごとしか言えねえ甘ちゃんか。」 「儒楽第。お前には、負けられない!ここでお前を、止めて見せる!」 「ほざけ!今のお前に、何ができる!」 儒楽第が致命的な打撃を加えるために、地面を蹴る。 それに答えるように猪狩は踏み込み……そして、そのまま儒楽第を飛び越えるように……飛んだ。 それを引き金にしたかのように、今まで二人が乗っていた柱が、音を立てて崩れ去る。 攻撃のために踏み込んでいた儒楽第は、それに対応する事ができない。 「……気付いていなかったのか。 俺はずっと、あんたにダメージを与えるために攻撃してたんじゃない。俺が攻撃していたのは、柱のほうだったんだ。」 空中で、儒楽第と猪狩の視線が交叉する。 そしてそのまま、儒楽第は硫酸の海へに、水しぶきを上げて落下した。 「やった…。まさる、園長、皆…。俺、勝ったぜ…!」 倒れこんで、勝利を噛み締める猪狩。だが、 「……で、誰が誰に勝ったって?」 それは直に、間違いだったと知る事になる。 「この…声は…!?」 猪狩は飛び起き、すぐさま周囲を確認する。 十メートルほど離れた柱の上。 折れた柱と共に硫酸の海に沈んだはずの儒楽第が、今まさに、柱の上に昇ってきていた。 先ほどとは違う点は一つだけ。彼の纏うオーラが、赤色から紫色に変色している事だけだ。 猪狩へと近づきながら、儒楽第は淡々と告げる。 「俺の能力は適応さえ出来てしまえば、どんな攻撃も防げる。……硫酸なら、俺を倒せると思ったのか?」 「なん…だと…!?」 「普通ならここで、降参していてもいい頃だが……。」 「クッ……!」 猪狩はキッと、儒楽第を睨み付ける。 「……まだ、諦めちゃいねえようだな。」 「諦めるわけ、無い。家族が俺に味方してくれる限り……俺は、負けない!」 儒楽第が、猪狩と同じ柱に飛び乗る。 「……また、家族の話か。」 「ウラアーッ!」 猪狩が拳を振り上げ、儒楽第に殴りかかろうとする。 しかしその直前、儒楽第が一瞬で間合いを詰め、猪狩の首をつかみ、片手で軽々と持ち上げた。 「う…ぐう…ッ!?」 「てめえの動きはもう分かった。もう、当たりもしねえよ、お前の攻撃は。」 必死にもがき、手を振り解こうとする猪狩だが、その動きすらも攻撃とみなされているのか、抜け出す事ができない。 「このまま殺すのは簡単だ。だが、てめえがそこまで家族に拘る理由に、興味がわいた。」 「何を…する気だ…!」 儒楽第が空いているほうの手で、猪狩の頭をつかむ。 「味あわせてもらうぜ。てめえの人生を……!」 卓越した共感覚によって、猪狩の頭から彼の過去が、思考が。儒楽第に向かって流れ込んでくる。 ……だがそれは、儒楽第が想像していたものとは、全く違うものだった。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 「まぁまぁ、いいじゃねえか。俺ら商店街とまこっちゃんは、家族みたいなもんだしよ!」 「じゃあ…ありがとうございました、おやっさん。また何かあったら、いつでも言ってください。」 『本当にありがたいよ、おっちゃん。これで俺の家族(リソース)がまた増えたんだから。』 「あはは。なんだ、マサさんも俺と同じ事思ってるんじゃないですか」 「かっ、勘違いすんじゃねえ!俺はおめえみたいな糞ガキの心配してんじゃねえんだよ。 ただ、試合でお前の身体に何かあったら、チビどもが…」 「ご心配ありがとうございます、マサさん。でも、ここまで来て後に引くわけには行きません。」 『なにせ、既に13人も家族(リソース)を失ってる。 ここで引いたら、あいつらの死が無駄になる。そんな事、俺にはできねえ!』 「なに水臭いこといってんだよ。俺たちは、家族だろ?そのくらい当然さ!」 『絆が強ければ強いほど俺の能力は強くなるんだ。その為だったら、このくらいの苦労は惜しくないさ!』 「……当たり前だ。俺の勝利を願ってる『死んでいった』家族の為にも、俺は勝たなくちゃいけないんだ!」 「死んだ家族は復讐なんて望んでいない。残された人に幸せになってほしいと、そう願ってるはずだ!」 『だから俺は……今まで殺してきた家族の為にも……絶対に幸せになって見せる!』 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * そこが、限界だった。 「ぐあああああああ!?」 今まで味わった事が無いほど、純粋で、混じり気の無い、それで居て不快な味。 その味に衝撃を受け、儒楽第は思わず、猪狩を掴んでいた手を離してしまう。 腐っている。この男は……根本から葉先まで、何から何まで……! 「この、外道め……!」 まだ体勢を整えきれていない猪狩の肩に、儒楽第の突きが叩き込まれる。 ゴキリ、という音と共に、猪狩の肩関節が外れる。 「うぐううううう!?」 儒楽第は同様に、他の四肢に打撃を叩き込み、猪狩の体の自由を奪う。 「……たとえてめえをここで殺しても、大会の蘇生能力者が、貴様を蘇らせちまうだろう。 だから、絶対に蘇生できないように、跡形も無く消し去ってやる。」 「クソ…ッ。俺は、負けるわけには…!」 首根っこを掴み、無造作に硫酸へと猪狩を投げ込む。 「…精々、苦しんで死ねや。この……ゲス野郎が。」 大きな音を立てて、猪狩の体は硫酸の海に沈んでいった。 (ちくしょう、体が動かねえ。俺は、ここまでか…園長、頼む。俺の代わりに子供たちを…) * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * (……いかん!) 会場から遠く離れた孤児院、どんぐりの家。 園長はそこで、儒楽第と猪狩の戦いを、テレビで観戦していた。 (まさるだけでは、不十分だったか……!儒楽第、まさかこれほどの手練とは!) まさるはこの孤児院でも、五指に入るほど猪狩に懐いていた。 それ故、園長はまさるならば、奴を殺すに足るだろうと会場まで送り届けたのだ。 (これ以上五本指を使うわけには行かん……。) (しかしそれ以下となると、この状況を打破するのには二人は要る…!) 迷っている暇は無い。園長は別室で大声を上げながら誠の応援をする子供たちから、二人を選んで声をかける。 「まゆ、めい……こちらに来なさい。大事な話がある」 怪訝な顔の二人の背中に手を回し、園長室の隠し戸から秘密の地下室へと連れて行く。 かつて選抜の際に、13人の子供が死んだ、その場所に。 (まっとれ!誠!すぐに力を届けてやるからな!それまで…なんとか、持ちこたえてくれ!) * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 硫酸の底に沈み、肌は焼けただれ、窒息する寸前だった猪狩は、自分の体に暖かい感覚が、流れのを感じた。 (これ…は…!) そしてだんだんと、感覚は強くなっていき、体から苦痛が消えていく。 『All for one』。 この感覚が、この力が、孤児院のまゆとめいによってもたらされた力が、自分を守ってくれている。 猪狩にはそれが、直感的に分かった。 (クソッ…!まさるだけじゃねえ…まゆと、めいまで……!) 猪狩の心に、怒りの炎が激しく燃え上がる。 彼の体に、かつて無いほど大きなエネルギーがわいてくる。 皮膚組織は凄まじい勢いで復元し、儒楽第に外された関節も、完全に回復している。 (儒楽第……お前のせいでまた、俺の大切な家族は……!) そして猪狩は決着をつけるため……凄まじい速さで泳ぎだし、硫酸の海から飛び出した。 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 儒楽第は、驚愕に目を見開いた。 ありえない光景が、彼の目には写っていた。 つい先ほど、彼の手によって痛めつけられ、硫酸の海に沈んだ相手が。 ろくに身動きができないはずだったその相手が。 凄まじい水柱と共に、その中から飛び出してきたのだ。。 猪狩は狙っていたかのように、儒楽第と同じ柱の上に降り立った。 「てめえいったい、どうやって…!」 「……まゆはとても元気がいい女の子だった。」 動揺する儒楽第を無視して、猪狩は呟く。 「何時も明るく振舞って……孤児院のみんなを元気付けていた。」 猪狩の握り締めた拳から、血が滲む。 「めいは絵がとても上手だった……。 いつか本を書いて、自分たちと同じような子達に、夢を与えたいといっていた!」 猪狩が、儒楽第を睨み付ける。その目は完全に怒りの色に支配されている。 「い、一体、何を言ってやがるんだ、てめぇ…!」 「それを・・・それを、おまえがっ!お前のせいでー!」 彼は理性を失っていた。完全に、キレていた。 「ウオオオオオオオオオオオ!」 激情に身を任せ、猪狩は儒楽第に殴りかかる。 儒楽第も体術で応じようとするが、その速さは先ほどまでとは比べ物にならず、直撃を受けてしまう。 (こいつ……先ほどとはまるで別人……!) 「これは……まゆの分!」 儒楽第の顔面に、猪狩の右拳が叩き込まれる。 オーラのお陰で威力は落ちているが、先ほどと違い変色しているためか、 僅かながらダメージを受けてしまう。 「これは……めいの分!」 「ぐああ…ッ!」 ボディに拳が叩き込まれ、思わず苦悶の声を上げてしまう。 「これは……まさるの分!」 更にもう一撃、儒楽第の体に拳が叩き込まれる。その威力は先程よりも確かに重い。 「ぐほぉ…ッ!」 「これもまゆの分!」 「がああ……!」 ボディへのダメージで、体がくの字に曲がる。 「これもめいの分!」 「ぐああっ!」 下がった頭に、強烈な蹴りが叩き込まれる。 「これもまさるの分!」 「ごああああ!」 追い討ちをかけるかのように、顔面に一撃。 「まだまだ……3人の苦しみは……こんなもんじゃねえー!」 猪狩が叫ぶ。怒りに比例するかのように、攻撃の威力と速度は、加速度的に上昇していく。 「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「ぐああああ!」 「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「がああああ…!」 「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「が…ぐっ……!」 「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「うぐ……ああ…!」 「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「あ……うぐ………」 (殺さ……れる。) もう、儒楽第に戦意は無かった。 今彼の心を支配していたのは、恐怖。 かつて、巨大な組織の頂点に立ち、闇の一端を背負った男、儒楽第。 その儒楽第が、怯えていた。猪狩誠の、圧倒的な暴力によって。 しかし、戦意を失っていようと、猪狩は攻撃の手を緩めはしなかった。 そう、まだ試合は終わっていない。そうでないなら……徹底的に叩く。それだけの事だ。 「まゆ!」「めい!」「まさる!」「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「う……あ……」 「まゆ!」「めい!」「まさる!」「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「かっ…………」 「まゆ!」「めい!」「まさる!」「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「……っ……っ……!」 「まゆ!」「めい!」「まさる!」「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「や………やめ……」 「まゆ!」「めい!」「まさる!」「まゆ!」「めい!」「まさる!」 「やめ…て…くれ…こう…さ…ん…だ…!たのむ…!」 猪狩の拳が、儒楽第の寸前でとまり、それと同時に、試合終了のブザーが鳴る。 儒楽第はそのまま、柱の上に倒れこむ。体力気力、共に限界だった。 対する猪狩は……先ほどまでの激昂が嘘のように、清々しい顔をしていた。 「おっさん。いい勝負だったな。これからは過去にとらわれず、自分のために人生を生きろよ。」 猪狩は倒れている儒楽第の手を無理やり握り締め、続けて言った。 「タイマン張ったらダチ。これでおっさんも……俺の家族だな!」 儒楽第は今まで自分の武器だった共感覚の存在を、初めて恨んだ。 猪狩の言葉には、偽りも欺瞞も無かった。本気でこいつは……儒楽第の事を…家族だと、思ってるのだ。 その感覚を最後に、儒楽第の意識は、暗い闇の中へ落ちていった。 このページのトップに戻る|トップページに戻る